多文化共生社会に求められる視点 ― 多様な人々が尊重される社会の実現に向けて ―
現代社会学部社会システム学科|Lisa ROGERS(リサ・ロジャーズ) 教授
現代社会学部 社会システム学科 4年|小野 純子 さん
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教授プロフィール

現代社会学部 社会システム学科 教授
Lisa ROGERS リサ・ロジャーズ
アメリカ出身。The University of Central Oklahoma卒業。The McGregor School of Antioch University、Fielding Graduate Universityで修士号を取得。「異文化関係」「人間と組織システム」をテーマに研究。現在は無意識の偏見や交差性、マイノリティ女性のリーダーシップなどをテーマに、多様な人々が尊重される社会の実現に向けた研究に取り組む。2005年本学着任、2023年より現職。
多様な背景を持つ人が
共に生きる社会をめざして。
アメリカの大学在学中に日本に留学し、その後も日本の中学校・高校や自治体、民間企業などで英語教育に携わりました。当時から関心があったのは、語学そのものよりも、「人と人との関係をより良くするためのコミュニケーション」でした。そこで、修士課程の進学先を探していたときに異文化関係学を知り、「文化の違いが人間関係に与える影響」や「異なる背景を持つ人たちが、どうすればより良い関係を築けるのか」を学びたいと思ったことが現在の研究の出発点となりました。
さらに、さまざまな人が企業や学校、地域などの組織の中でお互いを理解し、協働できる仕組みや関係性を考える「人間と組織システム」についても専攻しました。現在は、異文化関係学を基盤に、「人間と組織システム」の視点も取り入れながら、「誰もが尊重される社会を実現するための方策」の研究に取り組んでいます。
ダイバーシティ社会に潜む
「潜在的バイアス」と向き合う。

異文化と聞くと国籍や言語の違いを思い浮かべがちですが、文化とはそれだけではありません。性別や年齢、育った環境、所属する組織など、人はそれぞれ異なる背景を持っています。そうしたダイバーシティは社会を豊かにする一方で、多数派の価値観や社会の仕組みによって、生きにくさを抱えるマイノリティを生み出しています。
その困難の背景のひとつに、無意識の思い込みがあります。例えば、外国人に「お箸を使うのが上手ですね」と声をかける人は、相手を褒めようとしていることがほとんどでしょう。しかし、今ではアジアの食文化が世界各地に広まり、お箸を使う習慣も浸透しています。それでも、「外国人はお箸が使えないはず」という思い込みが根強くあり、言われた方は違和感を覚えるわけですね。
また、「みんな同じ人間」という表現もよく使われます。これは平等を表しているようでいて、自分の経験や価値観を基準とした、「あなたも“私”と同じ人間」という発想になっているのではないでしょうか。悪意がなくても、ステレオタイプの思い込みは相手を傷つけ、差別につながることがあります。特に、マジョリティに属する人は、自分たちの価値観を「普通」や「常識」と捉えがちですが、それがすべての人に当てはまるとは限りません。まずは、自身の無意識の思い込みに気づくこと。そして、異なる背景や価値観を持つ他者が置かれている状況を理解し、思いやりの心を持つことが大切だと考えています。


さらに、人はひとつの属性だけで生きているわけではありません。女性であり外国人でもある人、高齢者で障がいがある人など、複数の立場が重なることで、何重にも差別を受けることがあります。これを「交差性」と呼びます。最近では、こうした複雑な立場に置かれた人々の経験と生きづらさに目を向けながら、特にマイノリティ女性のリーダーシップについて聞き取り調査を行っていました。調査を通して見えてきたのは、課題に直面した人たちが、周囲と対話し、仲間とつながりながら行動を起こしてきた姿です。そうした姿には、これからの社会に必要なリーダーシップのヒントがあると考えています。
体験と対話を通して、
多様な人と協働できる力を育む。

自己理解を出発点にリーダーシップを育むという考え方は、ゼミの教育にもつながっています。授業では、学生が体験や対話を通して、自分自身の考え方や価値観に気づくことを重視しています。例えば、チームで協力しながら課題に取り組むアクティビティでは、一人ひとりの得意や苦手、物事の捉え方の違いを実感します。「みんな同じではない」ことを体験することが大切なのです。また、社会課題について意見を交わすディスカッション、フィールドワークなども積極的に取り入れています。自己理解を基盤として他者を理解し、足りない部分を補い合う。その過程がチームづくりやリーダーシップにつながっていきます。
学生には、「リーダーとは、人の上に立って引っ張る人」だけではないことも伝えています。実際に私が研究してきたマイノリティ女性の多くは、自分をリーダーだとは思っていませんでした。それでも周囲の人とつながり、支え合いながら活動を広げ、結果として地域や社会を動かす存在になっていました。一人で頑張るのではなく、仲間と力を合わせることも大切なリーダーシップなのです。
仲間とともに身近な課題から
社会をより良くしていく
本学には、学生同士が支え合い、ネットワークを築きやすい環境があると感じています。そのつながりを、ぜひ大切にしてほしいですね。そして、卒業後も身近な地域や職場、家庭など、自分の周りで感じた疑問や課題に目を向け、行動を起こしてほしいと思います。社会活動と聞くとハードルが高いと感じ、「自分には何もできない」と考えてしまうかもしれません。でも、例えば自分の子どものアレルギーのことで悩んでいたら、同じ悩みを持つ人たちと勉強会を開くところから始めてみる。対話を重ね、違いを理解することで、課題をより多角的に捉えることができます。みなさんの小さな一歩が、誰もが生きやすい社会をつくることにつながっていくと信じています。

Side Note
リサ先生はゼミの卒業生から、「社会に出て、先生と一緒に学んだことの意味を実感しました」と言われたことがあるそうです。社会で問題に直面したとき、リサ先生のもとで培った学びが、その困難に向き合う力になる――そんなエピソードからも、先生の教育の意義が伝わってきました。

ゼミ生プロフィール

現代社会学部 社会システム学科 4年
小野 純子 おの じゅんこ
「違い」を理解することで、人との向き合い方が大きく変化
#あこがれの存在
会社を経営する祖母です。女性として第一線で活躍する姿を見て育ち、自分自身の将来の目標設定へとつながりました。
#ルーティン
以前はインターネットに頼っていましたが、卒業論文の準備をきっかけに書籍から得られる知識の深さを実感し、今では読書も大切な学びの時間になっています。
#卒業論文のテーマ
「女性のリーダーシップやジェンダーギャップにおける日本とドイツの比較」をテーマに研究を進めています。
女性のリーダーシップを
学びたいと考え、リサ先生のゼミへ。

子どもの頃から「社会で活躍する女性になりたい」という思いがずっとありました。一方で、高校時代は将来やりたいことが明確ではなかったため、異文化理解や心理学、法律など幅広い分野を学びながら進路を考えられる現代社会学部社会システム学科を選びました。2年次生のときに、国際的な環境で働ける航空業界をめざしたいという目標が固まり、さらに将来は管理職として活躍したいという思いから、女性リーダーの育成を研究されているリサ先生のゼミを希望しました。
コミュニケーションを通して、
相手を理解する大切さを実感。

リサ先生のゼミで最も印象に残っている学びは「異文化コミュニケーションとは具体的にどういうことなのか」を掘り下げて考えた経験です。日本では意見の主張を避け、「言わなくても伝わるだろう」と思う場面がよくあります。しかし、実際には同じ日本人であっても、価値観や感覚、意見の相違から、誤解が生じることも少なくありません。ゼミではディスカッションを通して、自分とは異なるさまざまな意見に触れ、同じテーマでも人によって捉え方が異なることを実感しました。そして、まずは自分の気持ちや考えをきちんと言葉にして伝えることが大切なのだと学びました。
また、以前は人見知りの面があり、加えて、第一印象だけで「この人とは合わなさそう」と勝手に判断しがちだったのですが、積極的にコミュニケーションを取るようになると、その人の良いところや意外な一面がどんどん見えてくるようになりました。さらに、相手の背景や価値観を知ることで、発言の理由を理解し、多様な考え方を受け止められるようにもなり、自分自身の大きな成長につながったと感じています。
仲間との対話を力に、
社会で活躍していきたい。

リサ先生のゼミでは、グループで協力して課題を解決するアクティビティにも取り組みます。初回の授業では、水に見立てた教室の床を限られた数の紙皿を足場にして渡るアクティビティに挑戦しました。紙皿の置き方や渡り方をグループのメンバーで考えるのですが、コミュニケーション手段は英語のみ。身長や歩幅に加えて英語力の違いなども考慮しながら、知恵を絞り何度もトライしました。お互いを理解し支え合う大切さを、身を持って体験するとても貴重な機会になりました。
来春からは、航空業界というグローバルな職場で勤務します。多様な文化的背景を持つ人たちとの協力が不可欠な現場ですが、ゼミで学んだコミュニケーション力や異文化理解の視点を存分に生かし、将来は管理職としてチームを支えられる存在になることが目標です。
